地元の材料が生んだ、稀有なガラス。
刻々と表情を変える小浜の海が美しい『OBAMA blue』
「小浜らしさというなら、材料も小浜産で揃えようと決めました」。
ガラスの主原料である珪砂は地元小浜市の海の砂、石灰石は牡蠣殻とよっぱらい鯖の骨が使えると代用。鯖のアイデアは小浜市役所からの提案でした。さらに、地元で獲れる鹿の骨を試してみたこともありました。そうやって小浜産材料を揃えながら、“こんなのができたらおもしろいなぁ”と妄想しながら試作を続けました。しかし、試作は失敗ばかり。
「青になるどころか茶色になってしまったり、思うような結果がなかなか出ませんでした。かといって、意気消沈というわけではなく、実は、“こんなのができたら~”の妄想はとても楽しかった」
小浜市在住のガラス工芸作家、竹田恵子さん。ガラス工芸の技術は沖縄で習得しましたが、やはり地元小浜を大切に考え、小浜らしさを作り、伝えてきたいと、地元の材料を使った『OBAMA blue(オバマブルー)』の研究を2019年から開始。そして2022年3月に商品化されました。
溶かしては発色を確認するという溶解実験を繰り返し、ようやくイメージ通りの『OBAMA blue』が完成します。竹田さんは完成を喜び、作品作りに向けて意欲的になったかと思いきや、むしろその逆。「大丈夫かなぁ」と不安にかられたと言います。
「ガラスは過冷却液体という不安定な状態です。それに色も安定して出せるかどうかも分からないし、とにかく不安で心配でした」
竹田さんの『OBAMA blue』は緑がかったブルーですが、どれも同じではありません。むしろ、いろんな色合いなのが特徴です。
「工房の目の前が海で、毎日海を見ていますが、季節や気候、時間によって海の色が違って見えます。ブルーだったり、緑っぽかったり、少しくすんで見えたり、大げさにいえば、一瞬一瞬でも違います。それを見ていたら、『OBAMA blue』もそれでいいんじゃないかって。自分が作り上げるその時その時の色がOBAMA blueなんだという結論です。だから今は、いろんな色を作っていきたいと思っているところです」
「『OBAMA blue』のアイテムは、グラスや器、花瓶、アクセサリーなど多岐にわたります。そして、光との相性が良いガラスなので屈折によって様々な表情を見せてくれます。
「ガラスの厚みによって光の入り方や輝き方が変わりますし、アクセサリーは揺れるたびにキラキラとキレイですよね」
幅広い色合いが魅力とあって、「この色が好き!」と色を合わせてアイテムを揃えたり、いろんな色を楽しんだり、少しずつファンも増えてきているようです。
「これからは、エードットデパートメントストア用のオリジナルアクセサリーも作りたいと考えています。そのためには、まず妄想!(笑) イメージを膨らませています。それと、ランプシェードもいいなぁと考えているところです。日中の自然光で見える色と、夜の電球を通して見える色。どちらも楽しんでいただきたいですね」
工房から見える小浜の海は、穏やかでやさしくて、時々、悲しさや激しさも感じる、見る者を飽きさせない光景。その光景、今見た海の色がまさに『OBAMA blue』です。
KEiS庵
庵主 竹田恵子さん
小浜市生まれ。小浜市役所勤務を経て、沖縄県石垣島に移住。シーサー陶工房で働いている時に琉球ガラスに出会い、吹きガラスの道へ。2008年、小浜市でガラス工房「OBAMA glass KEiS庵」をオープン。ガラス工芸の理解と普及が認められ、2020年に小浜市文化奨励賞受賞。小浜市のふるさと納税の返礼品にも指定されている。