前回は越前ガニについてたっぷりとお話ししましたが、ここで疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。「福井の海の幸って冬以外はあまり楽しめないの?」と。いえいえ、そんなことはありません。実は福井の海の幸は、春夏秋にも魅力が盛りだくさんなんです。
ということで第4回は「冬だけじゃない!春夏秋にも楽しめる福井の海の幸」をテーマにお届けしたいと思います。越前ガニに代表される冬の味覚ももちろん素晴らしいのですが、それ以外の季節にも福井には海の恵みを堪能できる要素がたくさんありますよ!
四季を通じて楽しめる福井の海
春:旬の魚に出会える季節
冬を越えたばかりの海は新しい命に溢れ、魚介類も活気づき始めます。たとえば春先には、脂がのった「甘エビ」や、産卵前で旨みが増す「ホタルイカ」が注目の的。福井ではとれたてのホタルイカをさっと茹でて食べるだけでも、口いっぱいに磯の香りが広がって贅沢な気分にひたれます。
夏:清々しい海風と“キトキト”の魚たち
福井といえばどうしても「雪のイメージ」が強いかもしれませんが、夏の日本海もまた一興。透き通った海で育つイカやアジ、サバなどは鮮度抜群で、刺身でも焼き魚でも最高です。特に鯖街道で有名な若狭地方では、脂ののったサバが絶品。鯖寿司にしたり、さっと炙ってサッパリとした味わいを楽しむのもおすすめです。
また夏は漁港に活気が満ちており、朝市を覗いてみると新鮮な海の幸が並んでいるので“宝探し”感覚で回るのもおもしろいですよ。(キトキトは北陸の方言で「新鮮」という意味です!)
秋:魚介の身がさらに肥え、深まる味わい
夏の終わりから秋にかけては、海水温度が徐々に下がり、魚がさらに身を太らせてくれる季節。夏の暑さから解放され、身がギュッと締まった秋アジや秋サバ、カマス、サヨリなどの旬を迎えるのがこの頃です。
また、沿岸部の漁港近くでは秋祭りやイベントも開催されることが多く、地元の人々が“奥ゆかしさ”を発揮しながらも観光客を温かく迎えてくれます。いわゆる「観光地っぽくない雰囲気」が、福井のファンを増やしている大きな要因の一つかもしれません。
福井ならではの食文化と“奥ゆかしさ”
若狭フグや若狭ガキ、へしこも要チェック
冬に越前ガニがクローズアップされる福井ですが、実は「若狭ふぐ」や「若狭ガキ(牡蠣)」などのブランド食材も見逃せません。身がしっかり締まった若狭フグのお造りは、淡白な味わいの中にも甘みが感じられ絶品です。若狭ガキは、小ぶりながらもクリーミーで濃厚なコクが特徴。
そして忘れてはいけないのが「へしこ」。サバを糠(ぬか)で漬け込んだ保存食で、独特の香りと旨みが人気です。これらの食材に触れると、福井の人たちが昔から海とともに生き、「廃れない知恵」を育んできたことをしみじみ感じられます。
海の恵みを大切にする武家気質と禅の精神
前回、冬の味覚である越前ガニのブランド化を支えたのは“奥ゆかしさ”や“控えめながら誠実な姿勢”であるとお伝えしました。じつは春夏秋の海の幸でも、その精神はしっかり息づいています。
豊富な魚介資源にあぐらをかくことなく、取りすぎず、自然と調和しながら旬を活かす――このような姿勢は、禅文化や武家社会を経て脈々と受け継がれてきた質実剛健な精神にも通じるでしょう。
四季折々の海の幸を味わう旅のヒント
漁港巡りと料理体験
福井には小さな漁港が点在しており、そこでは朝市や地元の人々による催し物が開かれることがあります。朝どれの魚をその場で仕入れて、自分でさばき、地元の調味料を使って料理してみるのも面白いですよ。地元の人たちが優しく教えてくれるので、言葉の壁を感じることなく楽しめるはずです。
若狭湾めぐりと海沿いドライブ
気候が穏やかな春から秋にかけては、若狭湾周辺をドライブするのもおすすめです。リアス式海岸の美しい景観を楽しみながら、途中で見つけた漁港や道の駅に立ち寄れば、その日おすすめの魚や貝を買って帰ることができます。
もし時間に余裕があれば、地元の温泉に立ち寄るのもGOOD。海の幸に舌鼓を打った後、ゆったりと温泉に浸かって疲れを癒す――これぞ“福井の奥ゆかしい贅沢”です。
まとめ:福井の海の幸は一年を通じてあなたを待っている
冬の越前ガニはもちろんのこと、春夏秋にも福井の海には旬の魚や貝がたくさん存在しています。四季折々で味わいや食べ方が変化するのは、自然豊かな環境と、それを大切にしてきた福井県民の気質があってこそ。
紫式部や越前松平家といった歴史的背景、禅宗や武家社会の風潮、そして生業としての漁業や農業が長く続いてきたことで育まれた“奥ゆかしさ”は、こうした海の幸の楽しみ方にも色濃く現れています。
みなさんもぜひ、冬だけではなく一年を通して福井に足を運んでみてください。季節ごとに違う海の表情とおいしい海の幸が、きっと新たな感動をもたらしてくれるはずです。
次回、第5回は「奥ゆかしさが息づく福井の山里と“食”~越前そばやジビエ料理の秘密~」を予定しております。お楽しみに!