永平寺テロワールという物語の挑戦
目が届く、手が届く、心が届く永平寺白龍
日本酒は基本的に米の収穫が終わる秋頃から、仕込みがはじまります。
そして、1月くらいから3月くらいまでにできあがる火入れなどをしない、できたてしぼりたてを新酒と言われ、ハレの日などにも適したお酒とされています。
できたてしぼりたてなので、すこーしだけ発泡酒のような味わいが楽しめたり、フレッシュな感じも美味しくておすすめです。
ところで
福井県といえば、米処としても有名で、もちろん美味しいお酒があることで有名です。皆さんもご存知の銘柄がいくつかあるのではないでしょうか?
私が今回お伺いしたのは、永平寺町にある吉田酒造さんです。
冬の永平寺町。珍しい晴れ間には、清々しい空気が格別な気持ちにさせてくれます。そんな日に北島蔵に訪問。
SAKETOPIAの森田真衣さんからご紹介していただき、お伺いしたいとご連絡してから、何ヶ月も吉田社長と日程が合わず、今年に入ってやっと念願の訪問ができました!!ちなみにSAKETOPIAのWATERYは吉田酒造さんのお酒です。
永平寺町にある吉田酒造さんの北島蔵へお伺いすると、酒粕のふわっとした香りに包み込まれながら、凛とした空気がとても清々しく感じたのが、第一印象。そんな中で吉田由香里蔵元から直々にお話をお伺いすることができました。
吉田由香里蔵元と。素敵なお話をありがとうございました。
吉田酒造は、地元の米にこだわり、自社で作られた米と契約農家で栽培された永平寺町産の米のみを使って酒造りをされているそう。「永平寺テロワール」を主軸とし、地元の大地や風土を生かしてあるがままに感じることができる酒作りをされています。
そして、まさに、昨年販売開始された「永平寺白龍てきてき」シリーズ。禅の教えの中にあるてきてきという言葉。てきてき(的的)とは禅用語で、明らかなさま、あるがままを追究することを指します。
左から永平寺白龍米てきてき、水てきてき、土てきてき
冬の九頭竜川に陽が照らされ、朝霧が立ち込める様子が白い龍が天に昇っていく様子に見えたことから「白龍」と名付けられたそう
皆さんは、特定名称酒という言葉をご存知ですか?純米大吟醸や純米酒とかお酒のラベルに表示されているものです。お酒の原材料は、主に米、米麹、水ですが、中には醸造アルコールが入っているものがあります。醸造アルコールを入れることで味に幅が広がったり、華やかなものになったりもします。また、お米は削って使用するのですが、削れば削るほど、雑味も少なく甘味の多いものになります。醸造アルコールが入っているか、お米の削り具合によって、特定名称が変わってくるのです。
「永平寺白龍てきてき」は、永平寺テロワールを極めた最高に美味しいお酒を提供するために、この特定名称酒をあえて名乗らず、リリースしたそうです。「米は磨くほど、美味しい、価値がある」というお酒の世界観とはかけ離れた、お米づくりをも追求し、生産量は追わずにそれぞれのお米に合ったお酒づくりを目指す吉田酒造さんだからこそできる挑戦なのです。
永平寺テロワールという言葉、てきてきという言葉。一つ一つの言葉の意味を追求するように米、土、水を生かしながらの酒造りは、蔵元や杜氏、お酒づくり、米づくりに携わる一人ひとりのそして毎日の気持ちや環境に左右されながら、丁寧に日々作られているものなのだと感じました。吉田由香里蔵元は、終始とても優しい穏やかな表情でお話をしてくださいましたが、言葉一つ一つには、北島蔵へ一歩入った時に感じた凛とした美しさ、強さが込められているような感動的な時間でした。
あたり一面雪景色。雪に覆われた田ではお酒に使われる米を作られている。遠くに見える吉峯山にも雪化粧。山の反対側が永平寺。
そして、吉田酒造さんには、吉峯蔵という昨年建てられたもう一つの蔵があります。こちらの蔵では、蔵の見学や試飲、こちらでしか買えない搾りたてのお酒や限定酒を購入することができます。私も先日お伺いして(今年2度目の吉田酒造さん訪問!!)、コンシェルジュさんの案内でお米がお酒になるまでの工程を勉強させていただきました。吉峯蔵は、吉峯山という山の麓にあり、蔵を囲む広大な田んぼは吉田酒造さんのお酒づくりのためのお米を作っているそう。大雪の後の訪問だったため、あたり一面は真っ白。山々、林の木には雪が積もり、真っ白な蔵が美しく風景に溶け込んでいました。山を越えて反対側には永平寺があり、こちら側の麓には、精進料理を食すことができる吉峯寺もあるそうです。永平寺町という大地を余すことなく、堪能できる日本酒。
新しい蔵を作る時に掘られた井戸。蔵元がここ!といって一発で水を掘り当てたというまさかのお話も
酒蔵の案内図。地図に沿って見学していきます。
衛生法の基づき、外から蔵を見学。専属のコンシェルジュさんが丁寧に説明してくださいます。
ここでしか味わえないお酒も含めてお好きな3酒を選んで試飲させていただけます!
お酒の苦手な方や運転をされる方には、とびきり美味しい甘酒と酒粕のソフトクリームを。
搾りたての日本酒を購入して帰ることも嬉しいポイントです。
先代の「目が届く、手が届く、心が届く」という言葉をお聞きした時、永平寺テロワールという物語に合点が行き、一口一口を大切に私も飲みたいと思うと共に、ぜひエーデパを愛用してくださっている皆様にも飲んでいただきたい逸品だと感じました。大切にお届けできることを嬉しく思います。
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五十嵐郁子
1975年生。東京在住。エーデパディレクター。福井県越前市生まれ。日本女子大学卒。大学生の2人の娘の母。東京福井県人会理事。